未経験や医療資格がなくても医療に携われる、と実は求人市場でも人気の高いクリニックの受付スタッフ。
しかし、実際は「受付」と言っても業務内容は幅広く、医療機関の顔となり、患者さんとのやりとりも一番多い役割です。また、患者数が増える時期には業務過多になり、患者さんひとりひとりに向き合えないということも発生します。
そんな中、少しでも患者さんひとりひとりに向き合える環境を作り、患者さんへ良い医療体験を提供するには、定期的に業務を見直して、改善させていくことが大切です。
本記事では、クリニック受付の業務内容や改善するポイントについて解説します。
クリニックの受付業務は、まさにクリニックの「顔」とも言える重要な役割を担っています。
受診した患者さんが最初にことばを交わし、最後に挨拶するのが受付スタッフです。受付スタッフの対応が、クリニックの評価に直結すると言っても過言ではないでしょう。しっかりとした診察を行い治療アウトカムが良くても、受付の応対が適切でないだけで、台無しになってしまうケースも多くあります。
厳密に言うと「受付」というのは医療事務という業務の中の一つであり、実際は他にも多くの業務をこなさなければなりません。
クリニック・病院の経営にも関わる分野でありながら、クリニックに対する印象やエンゲージメントを左右する役割なので、責任感を持って従事する必要があります。
大きな病院に比べると、クリニックは少ない人員で業務を行っているため、どうしても業務内容や一人の業務量が多く、多岐にわたります。先述した受付業務の他、カルテ管理やレセプト業務、会計などが主な業務ですが、入院設備のあるクリニックであれば、さらに入院案内や手続きなどの業務が加わります。
こうして並べてみると、アウトラインが出来上がった形式的な仕事のように見えるかもしれませんが、実際は患者さんの対応や医師や薬剤師のサポートなどイレギュラーな業務が多くあります。
クリニックの受付業務において、直接的に業務量を減らすことは難しいですが、内容を改善することで利益の向上や仕事環境の改善が見込め、患者さんへの医療体験向上に寄与できます。
以下のポイントを確認して、改善できる点は積極的に改善していきましょう。
受付業務はクリニックの「顔」と先述した通り、受付での対応はクリニックの評価に直結するものです。
患者満足度を向上させるのは、医師の的確な診断や処置だけではありません。最初から最後まで気持ちよく利用できることが、患者さんのエンゲージメントに繋がるのです。そうして信頼いただき繰り返し受診していただける患者数を獲得できれば、経営面でも長期的に安定が見込めるでしょう。
ただし、ここでポイントとなるのが、スタッフごとに差が出ないよう徹底することです。
実際に現場で患者さんの声を聞くと「この人はいいけど、あの人はちょっと・・・」などといった意見を多く耳にします。このような場合、どうしてもいい評価よりも悪い評価の方が目立ってしまうため、一部のスタッフの影響でクリニック自体の評価が下がってしまうことも珍しくありません。
そういった事態を招かないためにも、全スタッフの接遇面を強化しましょう。
日々の業務の中では、どうしても効率的に仕事をこなせる人とそうでない人の能力の差が浮き彫りになります。そうなると、受付スタッフ間だけでなく、クリニック全体として「あの人に任せておけば大丈夫」といった雰囲気になり、特定のスタッフに仕事を任せがちになってしまいます。
確かに、優秀なスタッフに任せておけば、失敗も少なくスムーズに業務が回ります。しかし、その人が何らかの理由で長期休業を取ることになったり、退職することになった場合はどうでしょうか。現場はその日から業務スピードが落ち、それまでこなせていた業務が時間内に終わらないといった事態に陥るかもしれません。
そうならないためにも、誰もが同じように業務をこなせるよう、それぞれの負担を日頃から平均化させておくことや、業務定型化を目的にマニュアルを整備し、業務を属人化しないことが大切です。
また、スタッフの仕事量にあまりにも差があると、スタッフ間のパワーバランスにも影響が出る可能性があります。いつも誰かがピリピリしている、そんな環境下では、いくら接遇面を徹底しても、受診いただいた患者さんに良い医療体験を届けることができません。
他の人がフォローでき、業務遂行の再現性を整備することで、スタッフも気持ちに余裕を持って従事できます。それが、患者さんへの対応に還元されるでしょう。
大きく括られている業務であっても、細かく分けて簡素化することで、誰もが担える業務になります。
例えば、会計業務とひと括りにすれば一つの業務になってしまいますが、実際には看護師からカルテを受け取り、診療内容をシステムに入力、その後医療費を算出して患者さんに伝えます。その間に、明細書を用意しながら、処方箋を出力し、院内薬局であればその内容を薬剤師に伝えなければなりません。
そういった細かい作業を、一括せずに分割して考えることで、業務を分かりやすくするのです。一度に覚えなければならないことも少なくなり、新人教育や定型化もしやすくなるでしょう。
また、細分化することで業務の中のどの部分が難しいのか、時間がかかるのか、というポイントが明確になるのもメリットです。簡単な業務は一人で、反対に時間がかかる業務には人員を割くことで、クリニックとしても無駄のない人員配置ができるようになります。
とはいえ、実際これまで行ってきた方法を劇的に変化をさせるのは、簡単なことではありません。現場で働いているスタッフの声を聞きながら、できる範囲で細分化を進めていきましょう。
新人教育に人員が取られるという状況を避けるためにも、実用的なマニュアル作成と運用が必須です。
中にはそれ自体に時間がかかることを理由に、これまでマニュアルを作成してこなかったクリニックも多いでしょう。しかし、先にご紹介した作業の細分化を行うという観点と属人化を防ぐ目的で、業務マニュアルは必須です。
まずは業務を一つずつの大きなカテゴリーに分類し、そこから細分化したものをそれぞれの担当者が記載すれば、一人ひとりの負担を減らすことができます。
マニュアルが完成した後は、その都度新しく入ったスタッフからのフィードバック反映させ継続的に更新する、というルールを運用するのも効果的です。業務とそのマニュアルは常に進化します。読み込み、それを実行する新しいスタッフからは気付きや改善ポイントが多く出てくるでしょう。常に実用的な業務マニュアルを保てるように工夫しましょう。
それぞれが担当している、あるいは今抱えている業務を受付スタッフ全員が共有することも、働きやすい職場環境を作る際には欠かせないポイントです。お互いが状況を理解し、進捗情報などを共有し合いながら働くことで、トラブルが起きた時にもすぐにフォローに入れます。
これは言い換えれば、それぞれの役割と業務を透明化し、スタッフも全ての業務をこなせるようにしておく、ということを意味します。現場からは「そんなことは無理!」という声が聞こえてきそうですが、普段から業務を細分化して分かりやすくしておけば、決して難しいことではありません。全ての業務を確実に理解するとなると大変ですが、大体の流れを知った上でマニュアルを読むことで、ほとんどの問題は解決できるはずです。
また、普段からお互いの業務内容や業務量を理解しておくことで、誰かが不在になった際も他の人がカバーできるというメリットもあります。先に述べた「業務負荷の平均化」と合わせて実行すれば、「効率的な仕事ができる」「休みが取りやすい」そんな働きやすい職場となり、スタッフが患者さんに対して優れた応対を提供することが可能になります。一見、関連がなさそうなことですが、目の前にあるこういった課題を一つ一つ改善することが、患者さんにより良い医療体験を届けるのです。
クリニックの顔となり、印象を大きく左右する受付の業務。業務内容の幅広さなどが影響し、安定した人員を確保するのが難しくなってきたり、考えている医療体験を届けることができない、というお悩みをお持ちのドクターもいらっしゃることでしょう。
しかし、これまでの業務を細分化し、よりシンプルに考えることで、誰もが業務に取り掛かりやすくなります。まずは実用的なマニュアルを作成し、どのスタッフも分け隔てなく同じ仕事がこなせるようになることが大切です。
この機会に業務改善を行って、スタッフが自ら患者さんのエンゲージメントを高めるための環境作りを推進しましょう。
WISHealthでは、医療体験を改善するPatientSuccess™️の開発、医療機関への実装、それに付随するコンサルティングとハンズオン支援を通じて、患者さんエンゲージメントを高めます。ソフトウエアだけでなく、医療現場で弊社チームが現状の把握と改善の実践サポートをすることが可能です。
この記事でご紹介した、実用的な業務マニュアル作成、現存するマニュアルの更新、マニュアルの動画化なども多くの医療機関で実装してきました。
こういった現場の課題を改善したいというご要望、ソフトウエア導入についてもお気軽にお問い合わせください。