業務改善

クリニックにも業務改善が必須!必要性と押さえておきたいポイントをご紹介

公開日:2022/03/07

医療機関の業務は多岐にわたり、細かいルーティン作業も非常に多いものです。日々「やることが多すぎる」「時間内に終わらない」と嘆いている先生方、現場リーダーも多いでしょう。
そんな時は、業務改善を試みましょう。あらゆる企業では業務改善が日々推進されています。医療機関においても本質は変わりません。一度あらゆる業務を見直し、業務内容や方法を少し変えてみれば、業務に追われる毎日にも、余裕ができるかもしれません。
そこで今回は、クリニックにおける業務改善についてまとめました。その必要性や具体的なポイントを知って、よりよい環境を作りましょう。それが適切な医療体験と患者さんのエンゲージメントを高めることにつながります。

業務改善とは

そもそも業務改善とはなんでしょうか?

聞き慣れた言葉ですが、もう一度おさらいをしてみましょう。業務改善とは、現在の業務内容やその目的、抱えている課題などを見直して、改善させていくことを言います。段取りよく仕事が進まず、結果として提供する商品やサービスの質が悪くなった場合、顧客の満足度が下がるだけでなく、ビジネスとして利益を上げることはできません。医療機関においては、医療アウトカムが下がる、患者さんの満足度が下がる、そして患者さんのエンゲージメントが低下する、という状況に陥ります。
そういった悪循環の状況から脱却するために、業務改善を日々推進し、効率的な環境を作り出し、働くメンバーと患者さんに還元することが目的です。

業務改善が必要な理由

業務改善が必要な理由はいくつかありますが、中でも最も大きい理由は、あらゆる業務を目的から逆算してより効率的に業務が行える環境を作るためです。一見、毎日トラブルなくこなしているように見える業務も、一通り把握した上で見直してみると、必ず無駄やミスが起こりやすい部分が見つかるはずです。不要な業務はないか、どこか簡素化できる部分はないか、といった視点でじっくりと見直すことで、より効率よく生産性の高い環境を作ることができます。

そして、問題になるのが、労働人口の減少です。医療機関の現場を運営されている皆様も実感としてあるのではないでしょうか?募集しても人がなかなか集まらない…少子化と高齢化が同時に進む中、今後労働人口が減少の一途を辿ることは容易に予想できます。その中で、いかに少ない人員で効率的に必要な業務をこなしていくか、ということは非常に重要なポイントになるのです。
業務改善を行うことで、メンバー全員が効率的に業務をまわし、患者さんへ向き合うエネルギーを作ることができる環境になれば、その分現場にも余裕が生まれます。患者さんに気を配ることができるようになることで、クリニックに対する患者さんの評価が上がり、そこから患者さんエンゲージメントが形成されるという、まさに一石二鳥と言えるでしょう。

業務改善のポイント

業務改善を行うポイントについて、具体的にご紹介していきましょう。

接遇力の向上

業務を見直して無駄を省くことが第一、と思われがちな業務改善ですが、クリニックの評価に直結する接遇や対応面を見直すいい機会でもあります。
そもそもスタッフの言葉遣いや身だしなみなどを含む接遇面は、院長や経営者には把握しにくい部分です。院長は外来の診察や治療にあたっており、客観的に日々の業務と患者さんへの応対を確認したことがないのではないでしょうか。業務改善の機会には、まず現場を把握しガイドラインやルールを定め、日頃から徹底する仕組みを促すといいでしょう。
また、患者さんに対する接遇が不適当と感じた際は、経営側から何らかの処分を行うこともできます。業務改善に際し、就業規則や運営のルールを見直す、ということも視野に入れても良いかもしれません。もし変更する場合には、それを周知させておきましょう。

地域の相談役

クリニックを受診する患者さんのエンゲージメントを向上させるためには、「地域におけるその分野の相談役」といった印象を持ってもらうことが大切です。クリニックと病院は異なる位置づけですが、受診する側からすれば「医療機関=行きにくい」というイメージが少なからずあります。そのイメージを払拭するためのポイントが、今注目を集めている「予防医学」です。

予防医学とは、簡単に言うと「病気になる前に日頃から予防する」ことを指します。従来、医療機関といえば病気になってから受診するものでしたが、予防医学を実施している病院やクリニックには、健康な身体を維持するために多くの人が足を運んでいます。生活習慣を改善するための知識やアドバイスをもらいたい、定期的に健康診断を受けたい、医療機関を受診する患者さんたちにはそういった思いもあります。
そういった予防医学や日々の習慣についてのアドバイスを届けることで、「行きにくいクリニック」から「気軽に相談できるクリニック」に変わることができます。これまでになかった新しい習慣や分野を取り入れるのは簡単ではありませんが、長期的に患者さんとの関係性を維持していくためにも、予防医学やアドバイスを個々の診察時に行うのは有効と言えるでしょう。それが他のスタッフにも伝わり患者さんのエンゲージメントを高めることにつながります。

他院との連携

クリニックは、地域に欠かせない医療機関ではありますが、病院と比べるとできることに制限があることがあります。入院病床が少なかったり、精密検査が難しかったり、あるいは大きな手術も困難な場合もあります。このように、一つのクリニックだけで患者さんに満足な医療を提供するには限界があるのです。
その状況を救うのが、他院との連携です。他の診療科や地域中核病院などと連携を図ることで、専門分野外の患者さんやクリニックでは処置が難しい患者さんを紹介することができます。反対に、大きな病院で手術を受けた患者さんのフォローを依頼されるケースなども増えてくるでしょう。
そうして他院との関係性を維持していくことで、安定した患者さん数を確保することにも繋がるのです。

コスト削減

業務改善と聞いて、必須項目と思い浮かぶのが、コスト面の削減なのではないでしょうか。

コスト削減、というと少し身構えてしまいますね。これは医療機関だけではなく、経済的な利益を追う企業であっても最もハイコストなのは人件費だと言われています。しかし「給与を減らしてしまおう!」と安易に考えてはいけません。
医療機関を運営していく上での要となっているのは間違いなく従事してくれているスタッフであり、まさに必要不可欠な存在です。医療はチームです。そのスタッフの給与や賞与をカットしてしまうと、全体的なモチベーションが下がり、中には退職する人も出てくるはずです。そうなると本末転倒となってしまうため、人件費でコスト削減を考えるのは、この業務改善とは本質が異なります。

まずはスタッフ全員が提供している医療を自分ごと化し能動的に良い医療を提供する仕組みと環境を整えることからです。スタッフ一人一人がそれぞれ活躍しやすい環境等を整備しましょう。これについては別の機会で紹介したく思います。

効果があるのが、その他の固定費や仕入れの医薬品費の見直しです。テナントとしてビルの一角などに入居している場合は、今よりも賃料が安く条件のいい物件が付近にあるかもしれません。
また、昨今は新型コロナウイルスの影響で全国的に賃料が下がっている傾向にあります。この機会に、店舗や駐車場の賃料交渉をしてみるのもおすすめです。

医薬品にかかる費用についても、開業以来取引を続けている医療卸業者や代理店とは、特に交渉しないまま仕入れているというクリニックが少なくありません。業務改善の際は、他業者からの見積もりを取るなど、あらためて価格と価値のバランスを見直して、適正価格で取引ができているのか、必要なのかを確認しましょう。
同じように消耗品においても再チェックを行い、無駄があった場合はあらためて仕入れ価格や仕入れ数の交渉も検討すべきです。医療機関や医師にはお馴染みのエムスリーも、消耗品や費用対効果についてはシビアに管理している、という話はよく知られています。

マニュアル作成 

医療機関の現場をうまく運営していく中で、マニュアルを用意することも必須事項の一つです。マニュアルがなければ、新人が入職したり、普段行っていない業務を他の人に担ってもらう際、業務を教えるために人手が取られてしまいます。
もちろん、マニュアルがあっても新人教育を行う人員は必要ですが、マニュアルを読みながら行うのと全く資料がなく業務に取り掛かるのとでは、作業効率と業務の定着が大きく異なります。クリニックでは最低限の人員配置で運営していることも多いため、なるべく早く新人を戦力とするためにも、必ずマニュアルは用意しておきましょう。

また、マニュアルを常に更新していくことも忘れてはいけません。長年使用されているマニュアルは、非効率で生産性が悪く、内容量も多くなりがちです。業務改善の際には、よりシンプルで分かりやすい内容に変更することを心掛けましょう。常に最新のものにして、できる限り万人に理解しやすいようにアップデートを続けましょう。

まとめ

医療機関の業務改善についてご紹介しました。
業務改善は良く耳にする組織運営の基本動作ですが、どうしても腰が重い…とお聞きします。一見問題なくこなせている日々の業務も、あらためて全容を把握し見直すことで、多くの改善ポイントが見つかります。魔法はありません。無駄を減らし目的に沿った改善を続ければ、スタッフにとっての環境改善となるだけでなく、患者さんに満足いただき、エンゲージメントを高める、という影響が出るはずです。

できることから改善し、誰もが気軽に相談できる医療機関を目指しましょう。

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WISHealthでは、医療機関における業務の現状把握、改善ポイント洗い出し、実行プランの策定、実行までサポートしてきました。基本的なことですが、手をつけるにはどこからスタートしてよいかわからない、といったお声に弊社のチームが伴走いたします。

医療体験を改善するPatientSuccess™️の開発、医療機関への実装、それに付随するコンサルティングとハンズオン支援を通じて、患者さんエンゲージメントを高めます。ソフトウエアだけでなく、医療現場で弊社チームが現状の把握と改善の実践サポートをすることが可能です。
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執筆

川勝歩
Founder & CEO, WISHealth
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